ゴールデンウィークどこも混んでるから行かない私が夜だけ贅沢してしまった話

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    ゴールデンウィーク、どこにも行かない私の部屋だけが少し高級になる話

    くつろぐ女性

    朝、カーテンを開けたら、ベランダの手すりが少しだけぬるい光を持っていて、あ、もう完全にゴールデンウィークの顔してるなぁと思いました。
    近所の道路からは、いつもより早い時間に車のドアを閉める音がして、誰かの家族がどこかへ向かっている気配だけが、部屋の中まで入ってきました。

    私はと言えば、洗いっぱなしのマグカップを横目に、スマホでホテル代を見て、そっと画面を閉じました。

    高い。
    いや、知ってたけど高い。

    ガソリン代も、外食代も、お土産代も、たぶん勢いで買う謎のキーホルダー代も、全部合わせたら10万円くらいは軽く飛んでいきそうで、なのに到着した先で待っているのが行列と人混みと、トイレの場所を探す時間だったら、私は何をしに行くんだろう……と、朝から妙に静かな気持ちになりました。

    「どこも混んでるし」は、ちょっと負け惜しみに聞こえる

    友だちからLINEが来ました。

    「GWどっか行く?」

    この一言、毎年ちょっとだけ心臓に悪いです。
    別に責められているわけじゃないし、相手もただ聞いているだけなのに、なぜか私は一瞬で、すごく充実した答えを探してしまいます。

    「近場でゆっくりかな〜」
    「人多そうだし、今年はのんびりする予定」
    「家のこと片づけるかも」

    このあたりを、まるで用意していた小鉢料理みたいに並べるのですが、心の中ではちゃんと知っています。

    どこも混んでるから出かけない。
    お金もけっこうかかるから出かけない。
    でも、それを真正面から言うと、ちょっと寂しい人みたいに見える気がして、語尾だけふわっとさせています。

    「まぁ、今年はいいかなって」

    いいかなって、何が。
    自分で言っておいて、自分にツッコミたくなりました。

    独身一人暮らしのゴールデンウィークって、自由で最高なはずなのに、SNSを開いた瞬間だけ、急に採点されている気分になることがあります。

    空港の写真、海沿いのカフェ、ホテルの朝食、白いワンピース、謎に映えるスーツケースの車輪。

    みんな本当にそんなにキラキラした朝を過ごしているのか、もしくは私が寝ぐせのまま冷凍ごはんを解凍している時間だけ、世界が意地悪に編集されているのか。

    私の朝は、レンジの中でごはんが回っている音と、シンクに置いたスプーンの小さな水滴と、昨日の夜に脱いだ靴下の片方がなぜか洗面所前にいることから始まります。

    これを「丁寧な暮らし」と呼べたら才能だと思います。
    現実は、ただの生活です。

    でも、生活って、案外いちばんお金をかけていない場所かもしれません。

    旅行のためなら数万円を出せるのに、毎日使っている枕カバーは少し毛玉があっても見ないふりをしているし、マットレスもいつ買ったのか思い出せないまま、なんとなく寝ています。

    朝起きたときに腰が重い日があっても、「昨日スマホ見すぎたかな」「年齢かな」「仕事で立ちっぱなしだったし」と、自分の体の声を雑にまとめてしまいます。

    人には「ちゃんと休んでね」なんて言えるのに、自分の休ませ方になると急に下手になるの、あるあるすぎて少し笑えます。

    浮いたお金を使わない私は、なぜか偉い気がしていた

    ホテル代を見て閉じたあと、私はしばらく「行かなかった分、節約できた」と思っていました。
    それはそれで、かなり立派なことです。

    連休って、気づくとお金が溶けます。
    コンビニで買うアイス、駅で買うカフェラテ、移動中に食べる何か、帰ってから疲れすぎて頼むUber。

    でも、節約できたはずのお金って、財布の中でじっとしているようで、実はぜんぜんじっとしていません。

    昼すぎにドラッグストアへ行って、なくても困らないリップを買って、ついでに限定パッケージのシャンプーを見て、スーパーで少し高いお惣菜を選んで、夜には「今日は出かけてないし」と言いながらネットで服を眺めてしまう。

    お金を使わなかった私、どこ行った。
    午前中の私、もう退勤したんか。

    小さな散財は、ちゃんと心をなだめてくれます。
    けれど、次の日の朝まで残るかと言われると、少し微妙です。

    かわいいリップは気分を上げてくれるけれど、寝不足の顔に塗ると、なんだかリップだけが張り切っていて、本人が置いていかれる日もあります。

    そのとき、ふと「毎日使うものにお金をかけるって、地味すぎて忘れてたな」と思いました。

    派手な買い物じゃないし、SNSに載せても反応はたぶん薄いです。

    新しいマットレスを買いました、なんて投稿しても、友だちは「お、おう」くらいの温度かもしれません。

    でも、夜に体を預ける場所が変わるって、実はけっこう大きいのでは、という気持ちが、部屋の隅からそっと出てきました。

    モットンという高反発マットレスを見ていたのは、その流れでした。

    寝返りをサポートする反発力や体圧分散をうたっていて、硬さもソフト、レギュラー、ハードの3種類から選べるようになっていました。
    体重や好みに合わせて硬さを選ぶという説明を見たとき、なぜか私は少しだけ照れました。

    マットレスにまで、自分の体を見られている気がしたからです。

    いや、誰も見てない。
    ただの寝具です。

    でも、いつも「まあ大丈夫」で済ませてきた自分の体に、急にサイズを測られるような感じがしました。

    旅行なら、私は行き先を選びます。
    ホテルなら、景色や朝食や駅からの距離を見ます。

    でも、毎晩眠る場所については、なぜこんなに「まだ使えるし」で終わらせていたんだろう。

    答えはたぶん、地味だからです。
    そして、地味なものほど、後回しにしやすいからです。

    旅行に行かない理由を、少しだけ美化してみたくなった

    夕方、近所のスーパーへ行きました。
    レジ前には、連休用なのか大きなお菓子の袋が積まれていて、子どもがそれを抱えて離さなくて、お母さんが少し困った顔で笑っていました。

    私はカゴの中に、豆腐と卵とカット野菜と、なぜか小さい柏餅を入れていました。

    4月29日、昭和の日。
    ゴールデンウィークの入口みたいな日で、空気だけが少し浮かれていて、和菓子売り場にはもう端午の節句の気配がありました。

    家に帰って、柏餅をお皿に出して、緑茶もないのに白湯で食べました。

    おしゃれさ、ゼロです。
    でも、葉っぱの香りがふわっとして、少しだけ外に出たみたいな気分になりました。

    こういう小さな瞬間を、誰かに見せる必要はないのかもしれません。

    けれど、誰にも見せない時間ほど、ちゃんと整えてあげたら、自分の機嫌は少し変わるのかもしれません。

    その夜、私は旅行サイトではなく、寝具のページをまた見ていました。

    モットンには90日間の返金保証制度があり、対象サイトからの購入や90日間使った後の連絡など、条件付きで試せる仕組みがあるようでした。
    全国送料無料や購入後180日間のメールサポートについても公式ページに書かれていて、寝具って買ったら終わりだと思っていた私は、少し意外でした。

    もちろん、マットレスを買えば急に人生が整うわけではありません。

    朝起きたら婚活アプリの返信が全部理想通りになっているとか、職場の人間関係が急に無風になるとか、そんな魔法みたいなことはないです。
    そこまで期待したら、マットレスもたぶん困ります。

    でも、疲れて帰ってきて、メイクを落とす気力もぎりぎりで、スマホを握ったままベッドに倒れ込む夜に、「あ、ここだけはちゃんとしてる」と思える場所があるのは、少し救いかもしれません。

    外に出かけない連休は、何もしていないように見えます。

    写真も増えないし、話のネタも少ないし、「どこ行った?」と聞かれたときに答えが弱いです。

    でも、部屋の中で自分の寝る場所を変えるって、外からは見えない旅行みたいでもあります。

    移動距離はゼロなのに、夜の沈み方だけが変わる。
    誰にもお土産は渡せないけれど、翌朝の自分にだけ、少し違う体の軽さを渡せるかもしれない。

    そう考えると、10万円から15万円の予算を、数日分の思い出に使うのか、毎日の眠りに振り分けるのか、どちらが正しいという話ではなくて、その年の自分がどこに連れて行ってほしいか、みたいな話に近いのかもしれません。

    遠くのホテルに連れて行ってほしい年もあります。
    誰かと写真を撮って、知らない街で少しはしゃぎたい年もあります。

    でも今年の私は、もしかしたら遠くより、ちゃんと眠れる夜に連れて行ってほしいのかもしれません。

    本当は、出かけないんじゃなくて帰りたかったのかもしれない

    夜10時すぎ、ベランダに出たら、どこかの家から焼き肉みたいな匂いがしました。

    連休の夜って、どうしてあんなに匂いまで楽しそうなんでしょう。

    私は部屋に戻って、洗濯物を畳みながら、急に少しだけ寂しくなりました。

    出かけないと決めたのは自分なのに、出かけている人を見ると、置いていかれたような気がする。

    お金を守ったはずなのに、何かを取りこぼしたような気もする。

    この感じ、人に言うほどではないけれど、心の引き出しの奥でけっこう場所を取ります。

    でも、その寂しさを埋めるためだけに予定を入れると、帰ってきたあとにもっと疲れてしまうことも、私はもう少し知っています。

    楽しいのに疲れる。
    会いたかったのに帰りたくなる。
    写真は笑っているのに、帰宅後の部屋で無言になる。

    そんな自分を面倒くさいなと思いながら、それでも嫌いにはなりきれないです。

    モットンのページを閉じたあと、私はすぐに買ったわけではありません。

    そこはちょっとリアルに言うと、まだ迷っています。
    高い買い物ですし、寝具って失敗したら存在感がすごいです。

    部屋の中で「私、合いませんでしたけど?」みたいな顔をされたら困ります。

    ただ、旅行に行かない自分を、節約した自分としてだけ扱うのは、少し違う気がしてきました。

    行かなかったお金を、ただ消えなかったお金として置いておくのではなくて、毎晩の私に少しずつ戻していく使い方もあるのかもしれません。

    そう思ったら、どこにも行かない連休が、急に何もない空白ではなくなりました。

    部屋の中に、まだ選べる場所があったみたいで。

    そして、ここからが少しだけ自分でも意外だったのですが、私はマットレスより先に、古いシーツを洗いました。

    ついでに枕カバーも替えて、ベッドの下に落ちていたヘアゴムを拾って、なぜかなくしたと思っていたピアスの片方まで見つけました。

    旅行代をマットレスに投資しませんか、なんて考えていたはずなのに、最初に変わったのは買い物ではなくて、ベッドの下を覗いた自分でした。

    なんだそれ、と思いました。
    でも、ちょっと笑いました。

    買うか買わないかの前に、私はたぶん、自分の眠る場所をちゃんと見たかっただけなのかもしれません。

    今年のゴールデンウィーク、私はまだどこにも行っていません。
    でも今夜、昨日より少しだけ早くベッドに入ってみようかな、とは思っています。

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