通勤バッグが重い日は心も疲れている…夜になると荷物を増やしてしまう理由

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    バッグが重い日ほど、私は“ちゃんとして見える自分”を持ち歩いていたのかもしれません

    女性イメージ

    5月31日。暦の上では初夏の入り口に立っているのに、夜になると少しだけ空気が湿って、梅雨の気配がそっと肩に触れてくるような季節です。昼間は半袖でも歩けるのに、帰り道の風にはまだ春の名残があって、バッグの持ち手を握る手だけが、妙に疲れていることに気づく日があります。

    最近、ふと思ったのです。

    私のバッグ、どうしてこんなに重いのでしょうか。

    財布、スマホ、鍵、ハンカチ、リップ、目薬、予備のマスク、充電器、イヤホン、折りたたみ傘、エコバッグ、薬、絆創膏、小さなポーチ、もう使っていないレシート、いつ入れたかわからない飴、そして「念のため」に入れた何かたち。

    ひとつひとつは小さいのに、全部集まると、なぜか心まで重くなるのです。

    もちろん、バッグの中身が多いこと自体が悪いわけではありません。むしろ、ちゃんと準備している証拠です。急な雨にも対応できるし、外出先で唇が乾いてもリップがあるし、誰かが困っていたら絆創膏を差し出せるかもしれません。

    でも、ある夜、仕事帰りの電車の窓に映った自分を見たとき、私は少しだけ苦笑いしてしまいました。

    肩からずり落ちそうなバッグを抱えて、顔だけは平気そうにしている私が、そこにいたのです。

    「大丈夫です」
    「全然平気です」
    「私、ちゃんとしています」

    そんな言葉を、バッグの中に詰め込んで歩いているみたいでした。

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    小さいバッグに憧れるのに、なぜか大きいバッグを選んでしまう夜があります

    街で小さなバッグを軽やかに持っている女性を見ると、少し憧れます。小さなバッグひとつで出かけられる人は、自分に必要なものがわかっている人に見えるからです。

    スマホと小さな財布とリップだけ。そんな身軽さには、どこか余白があります。

    でも、私が同じことをしようとすると、玄関で止まってしまいます。

    「もし雨が降ったら?」
    「もしスマホの充電が切れたら?」
    「もし急に体調が悪くなったら?」
    「もし化粧が崩れたら?」
    「もし誰かに会ったら?」

    その“もし”が、ひとつ増えるたびに、バッグの中身も増えていきます。

    30代になると、若い頃よりも少しだけ、失敗したくない気持ちが強くなる気がします。忘れ物をして慌てる自分を見せたくない。疲れているのに無理していることを知られたくない。恋愛でも、仕事でも、友人関係でも、できれば余裕のある人に見られたい。

    だから、バッグの中には物だけではなく、「ちゃんとしていたい気持ち」が入っているのかもしれません。

    リップは、きれいに見られたい気持ちです。

    充電器は、誰かからの連絡を逃したくない不安です。

    折りたたみ傘は、予想外のことに負けたくない気持ちです。

    薬や絆創膏は、自分の弱さを自分でなんとかしようとする癖です。

    エコバッグは、買い物の予定がなくても、何かを受け止められる自分でいたいという小さな構えです。

    そう考えると、バッグが重い日は、ただ荷物が多い日ではありません。

    少しだけ不安が多い日です。

    少しだけ自分を守りたい日です。

    少しだけ誰にも迷惑をかけたくない日です。

    小さいバッグに憧れながら、大きいバッグを選んでしまう私たちは、もしかしたら荷物を持っているのではなく、“安心の形”を持ち歩いているのかもしれません。

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    バッグの中のレシートは、捨て忘れではなく、私が過ごした一日の証拠でした

    バッグの中を整理していると、必ず出てくるものがあります。

    レシートです。

    コンビニで買ったカフェラテ。
    ドラッグストアで買った日焼け止め。
    仕事帰りに寄ったスーパーの小さなお惣菜。
    なんとなく買ったチョコレート。
    疲れすぎて入ったカフェのレシート。

    それを見るたびに、少しだけ恥ずかしくなります。

    「また余計なもの買ってる」
    「節約しようと思っていたのに」
    「ちゃんと自炊するつもりだったのに」

    でも、よく見ると、そのレシートはただの出費記録ではありませんでした。

    その日は、朝からずっと気を張っていたのかもしれません。誰かの言葉に少し傷ついたのかもしれません。帰り道に急に寂しくなって、温かい飲み物がほしくなったのかもしれません。家に帰って何かを作る元気がなくて、でも空腹のまま眠るのもつらくて、お惣菜を買ったのかもしれません。

    バッグの奥に折れ曲がって残っていたレシートは、私がだらしない証拠ではありません。

    その日をなんとか乗り越えた証拠でした。

    5月の終わりは、季節の変わり目で、心も体も少しゆらぎやすい時期です。春に頑張って始めたことの疲れが出て、夏に向かう明るさに追いつけない日もあります。紫陽花が咲き始める前の、空が少し曇りがちなこの季節は、理由のない疲れがそっと溜まりやすいのです。

    そんな日に、バッグの中がぐちゃぐちゃでもいいのだと思います。

    ポーチの中に使いかけのリップが何本もあってもいいのです。

    イヤホンのコードが絡まっていても、レシートが丸まっていても、飴の包み紙が出てきても、それは全部、生活している証拠です。

    きれいなバッグの中身だけが、正解ではありません。

    雑誌に載っているような整ったポーチも素敵です。色味がそろった小物も、見ているだけで気分が上がります。でも、私たちの毎日は、そこまできれいに整えられる日ばかりではありません。

    むしろ、バッグの中に少し生活感があるほうが、人間らしい気がします。

    頑張った日ほど、バッグは乱れます。

    気を遣った日ほど、ポーチは開けっぱなしになります。

    疲れた日ほど、レシートは捨てられません。

    でも、それでいいのです。

    バッグの中が荒れている日は、心まで荒れているのではなく、今日をちゃんと生きたあとかもしれません。

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    本当に捨てたかったのは荷物ではなく、“余裕があるふり”だったのです

    ある日、私は思い切ってバッグの中身を全部出してみました。

    床の上に並べてみると、驚くほどたくさんの物が出てきました。必要なものもありました。でも、明らかに今はいらないものもありました。

    期限の切れたクーポン。
    もう使っていないポイントカード。
    いつか飲もうと思って入れたままのサプリ。
    底のほうで少し汚れたポーチ。
    同じような色のリップ。
    予備の予備みたいなハンカチ。

    私はそれを見ながら、ひとつずつ捨てていきました。

    すると、不思議なことに、バッグが軽くなるより先に、胸のあたりが少し軽くなったのです。

    そのとき気づきました。

    私が本当に手放したかったのは、物ではなかったのかもしれません。

    「いつでも完璧に対応できる自分」
    「急な予定にも笑顔で行ける自分」
    「疲れていてもきれいにしている自分」
    「恋愛で傷ついても平気な自分」
    「仕事でしんどくても大丈夫と言える自分」

    そういう“余裕があるふり”を、ずっとバッグに詰め込んでいたのです。

    でも、よく考えたら、毎日そんなに完璧じゃなくてもいいのです。

    充電が切れたら、少し連絡が遅れてもいいのです。

    雨が降ったら、コンビニで傘を買ってもいいのです。

    リップを忘れたら、その日は少し薄い顔で帰ってもいいのです。

    疲れているなら、早く帰って寝てもいいのです。

    全部に備えなくても、私は私のままで帰ってこられるのです。

    そして、ここで少しだけ、話が変わります。

    バッグを軽くした数日後、私は友人と会う予定がありました。いつもなら、メイク直しの道具も、替えのマスクも、充電器も、折りたたみ傘も、念のための薬も入れていくところです。

    でもその日は、小さなバッグで出かけました。

    スマホ、小さな財布、鍵、リップ一本。それだけでした。

    駅に着いた瞬間、少し不安になりました。けれど、同時に少しだけ自由でした。

    友人とカフェに入り、何気なくバッグを椅子に置いたとき、彼女が言いました。

    「今日、荷物少ないね。なんか身軽でいいね」

    私は笑って、「最近ちょっと減らしてみた」と答えました。

    すると彼女は、少しだけ黙ってから言ったのです。

    「私もさ、バッグ重い日って、だいたい心配事が多い日なんだよね」

    その言葉を聞いた瞬間、私は驚きました。

    私だけではなかったのです。

    みんな、バッグの中に不安を入れて歩いていたのです。

    そして、もっと驚いたのはそのあとでした。

    友人は自分の大きなバッグを開けて、笑いながら言いました。

    「でも今日、あなたに渡そうと思って、これ持ってきた」

    そこから出てきたのは、私が前に「かわいい」と言った、小さなポーチでした。

    「バッグの中を軽くしたいって言ってたから、これならリップ一本だけ入るかなと思って」

    私はその小さなポーチを受け取って、なぜか泣きそうになりました。

    荷物を減らしたら、何かを失うと思っていました。

    でも、本当は逆でした。

    荷物を減らしたら、人のやさしさが入る余白ができたのです。

    バッグを軽くすることは、何も持たないことではありません。

    全部をひとりで抱え込まないと決めることです。

    そして、誰かの小さなやさしさを受け取れる自分に戻ることなのかもしれません。

    今日、あなたのバッグが重いなら、それはだらしないからではありません。

    きっと、ずっと頑張ってきたからです。

    でも、今夜ひとつだけ、いらないレシートを捨ててみてください。

    使っていないリップを一本だけ出してみてください。

    期限の切れたクーポンを手放してみてください。

    それだけで、明日のあなたは少しだけ軽くなります。

    バッグの中に余白ができたら、そこに新しい季節の風が入ってきます。

    梅雨前の湿った夜風も、初夏の明るい朝も、少しだけやさしく感じられるかもしれません。

    そしていつか気づくのです。

    私たちが本当に持ち歩きたかったものは、完璧な準備ではなく、「今日の私でも大丈夫」と思える小さな安心だったのだと。

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