何も作れない日の罪悪感が軽くなる、温かいレンジスープの夜時間

今日は、帰り道の空気がやけに乾いていて、駅のホームで息を吸った瞬間に喉の奥が「カサッ」と鳴った気がしました。仕事は予定より伸びて、誰も悪くないのに、私だけが置いていかれたみたいな顔で改札を抜けて、コンビニの明るさに一瞬だけ吸い寄せられて、それでも入らずに帰ってきました。
部屋のドアを閉めたら、外の世界が急に無音になって、代わりに冷蔵庫のモーター音だけが生活している感じ。こういう夜、ちゃんとしたご飯を作る人を、私はずっと「えらい」と思ってきたし、作れない自分を「だらしない」と思いがちです。口には出さないけど、心の中で勝手に減点してしまう。
でも、今日はもう、包丁を持ちたくなかった。まな板を出して、洗って、片付けて…って想像しただけで肩が重くなって、スマホを触る指も鈍くなる。
なのに、何も食べないで寝ると、夜中に胃が空っぽの音を立てて目が覚める。夜食って、必要なのに、どこか「自分に甘い」みたいに扱われがちで、そこがまた、しんどい。わかる人、いると思う。
それで結局、私が今日選んだのは、レンジでチンするだけのスープでした。鍋も火も、できれば気合もいらないやつ。
レンジの「ブーン」という音って、家電のはずなのに、なんだか寄り添ってくれる感じがするんですよね。あれ、私だけかな。
今日の主軸にしたいのは、ここです。
「手間をかけない自分」を許せない夜が、まだある。ちゃんとしなきゃ、って、誰に言われたわけでもないのに。レンジで温めるだけのスープが、その小さな呪いを少しだけほどいてくれた話を書きます。
レンジスープって、雑に見えるけど、実は“失敗しにくい”合理的な料理でもあります。火加減で焦がす心配が少ないし、少量を作るのが得意。何より、疲れている時に「温かいものが胃に落ちていく」って、それだけで心がほどける。
しかも、コツさえ知っていれば、味はちゃんと決まるし、洗い物も少ない。忙しい日の夜食にも、朝の一杯にも、体調が微妙な日の“保険”にもなる。
まず、地味だけど大事なポイントをいくつか。これは調べ物というより、私の数え切れない失敗のメモです。
- 耐熱のマグカップか、深めの耐熱ボウルを使う(浅いと吹きこぼれる)
- ラップはふんわり。密閉すると膨張して危ないし、吹きこぼれやすい
- 加熱は一気に長時間より、30秒〜1分で混ぜて様子を見る(ムラが減る)
- 葉物は後入れでもOK。余熱でしんなりする
- 牛乳や豆乳は「最後に」入れると分離しにくい
- 熱い器の持ち運びに、私はよくやけどするので、布巾を最初から横に置く(学ばない女)
こういう細かい準備って、正直めんどう。でも不思議で、布巾を置くだけで「自分を雑に扱わない」感じが少し増えるんです。手間をかけるって、料理のためだけじゃなくて、たぶん自分のためなんだと思う。
ここから、今日の私が実際に作った(そして救われた)レンジスープを、3つ書きます。材料はだいたい家にあるもので、なければ置き換えられるようにしておきます。私の生活はいつも、代替案でできているので。
1杯分の罪悪感を溶かす、豆腐とわかめの生姜スープ
今日いちばん助かったのはこれ。冷蔵庫の端っこに、期限が迫った絹ごし豆腐が半丁だけ残っていて、見て見ぬふりをしようとして、でもそれをしたら「私はまた、ちゃんとできなかった」って思いそうで。
その時にふと、「ちゃんと食べる」って、豪華に作ることじゃないよね、って自分に言い聞かせました。これが今日の小さな変化。
材料(1人分)
- 絹ごし豆腐 1/3〜1/2丁(スプーンですくえる量でOK)
- 乾燥わかめ ひとつまみ
- 顆粒だし(和風) 小さじ1/2
- しょうゆ 小さじ1/2〜1
- すりおろし生姜 少し(チューブで十分)
- 水 200〜250ml
- あれば:白ごま、ねぎ、ラー油(気分で)
作り方
- 耐熱マグに水、だし、しょうゆ、わかめ、生姜を入れて軽く混ぜる
- 豆腐をスプーンですくって入れる(崩れてもいい。むしろ崩れてくれ)
- ラップをふんわりかけ、600Wで1分30秒〜2分。いったん混ぜて、ぬるければ30秒追加
- 仕上げに白ごまやねぎ。眠い夜はそのままでも成立

生姜って、味がキリッと締まるし、喉や胃が「温まった」って錯覚させてくれるから、夜食の罪悪感を薄くしてくれる気がします。
食べながら、私は思いました。自分を甘やかすことと、自分を雑に扱うことって、似ているようで、全然違う。レンジのスープは、後者を避けるための“簡単な道”だった。
冷蔵庫の端っこ救済、キャベツとツナの味噌ミルクスープ
次は、休日の昼に作りがちなやつ。私は食材を中途半端に余らせる天才で、キャベツの最後のほうが、いつも野菜室で薄くしおれていく。
あれを見るたびに、なんだか人間関係の“返信しそびれたLINE”を思い出すんですよね。放置すると、色も匂いも変わっていくのに、見ないふりをする感じが似てる。今日の私の、あまり触れてこなかった視点はここかもしれない。食材の放置と、心の放置。
材料(1人分)
- キャベツ ひとつかみ(ざく切りでも千切りでも)
- ツナ 1/2缶(オイルでも水煮でも)
- 味噌 小さじ1〜1.5
- 牛乳 or 豆乳 50〜80ml
- 水 150ml
- 顆粒だし 少し(なくてもOK)
- 黒こしょう(あると急に“お店感”が出る)
作り方
- 耐熱ボウルにキャベツ、水、だしを入れてラップ。600Wで2分
- 取り出して混ぜ、ツナを入れる。さらに1分
- 味噌を少量のスープで溶いて戻す(塊が残ると悲しい)
- 最後に牛乳/豆乳を入れて30秒〜1分。沸騰させないのがコツ
- 黒こしょうをガリガリ。余裕があれば粉チーズも合う



味噌とミルクって、最初は「え?」って感じだけど、ちゃんと相性がいい。味噌の角が丸くなって、キャベツがやさしく甘くなる。
このスープを飲んでいると、放置していたものが少しだけ救済された気がして、私はその事実にホッとした反面、「私はなんで、放置するまで動けないんだろう」って、ちょっとだけ自嘲もしました。
でも、その“動けなさ”って、きっと疲れの蓄積なんですよね。自分に言い訳を許すのが下手な人ほど、放置が増える。わかる…。
夜食の味方、オートミール中華たまごスープ(洗い物1つ)
最後は、夜食に特化したやつ。どうしてもお腹が空いて、でも重たいものは無理で、でも温かいものは欲しい。そういう時に、私はオートミールに頼ります。
オートミールって、意識高い食材に見えるけど、実際は「米を炊く体力がない日の非常食」みたいな立ち位置で、私はその雑さに救われています。
材料(1人分)
- オートミール 大さじ2(食べるスープにしたいなら増やす)
- 卵 1個(溶き卵でも、そのまま落としても)
- 鶏ガラスープの素 小さじ1
- しょうゆ 少し
- 水 250ml
- ごま油 数滴(これがあると満足感が増える)
- あれば:冷凍ほうれん草、ねぎ、海苔、ラー油
作り方
- 耐熱ボウルに水、鶏ガラ、しょうゆ、オートミールを入れて混ぜ、600Wで1分30秒
- いったん取り出して混ぜる(とろみが出てきて楽しい)
- 溶き卵を細く回しかけ、ラップして30秒〜1分
- 仕上げにごま油。気分でラー油



卵がふわっと固まる瞬間、私はいつも「生き延びた」って気持ちになります。大げさだけど、たぶん本当。
夜食って、ただの食事じゃなくて、その日を終えるための“儀式”みたいなところがある。誰かに優しくされたい日の代わりに、自分で自分を温める方法。レンジの音は、その儀式のBGMです。


ここまで書いておいてなんですが、レンジスープにだって、うまくいかない日があります。吹きこぼれてレンジの中が悲惨になったり、味が薄すぎて、結局塩を足し過ぎたり。
でも、私は最近思うんです。うまくいかなかったら、その日がダメになるわけじゃない。むしろ、「うまくいかなかったけど食べた」って事実が、生活の底を支えている。
今日の出来事は、本当に小さくて、帰宅して、冷蔵庫の前で立ち尽くして、ため息をひとつついて、レンジに頼っただけです。
そのとき心の中で浮かんだ本音は、「私、ちゃんとしないと誰にも選ばれないんじゃないか」という、料理とは関係ないはずの不安でした。仕事でも、友だちでも、将来でも、どこかでずっと、評価される前提で動いてしまう。
でも、温かいスープを飲んでいる間だけ、その不安が少しだけ遠のいたんです。レンジで作ったって、私の胃はちゃんと満たされるし、体はちゃんと温まる。誰かの採点表がなくても、私の身体は「ありがとう」って言っているみたいだった。
ささやかな変化は、ここ。
“手間をかけたかどうか”で自分の価値を測る癖に、私は気づいた。レンジでチンするだけのスープは、手間を省いているんじゃなくて、私の残り少ないエネルギーを守っている。
その守ったエネルギーで、明日の自分がもう少しだけ、人に優しくできるかもしれないし、返信しそびれたLINEに「ごめん、今日バタバタで」って送れるかもしれない。そういう小ささに、私は救われたい。
もし今夜、あなたがキッチンの前で固まっていたら、思い出してほしいです。
鍋を使わない夜があってもいいし、レトルトやインスタントに頼る日があってもいい。でも「温かいものを飲む」って選択だけは、あなたの味方になる。
わかる…って、たぶん、ここで言い合える。
明日の朝、マグカップの底に残ったスープの余韻を見ながら、あなたはどんな気持ちになるんでしょう。
“ちゃんと”の基準を、ほんの少しだけ下げてみても、案外、世界は崩れない。そう思えたらいいけど、思えなくてもいい。
今夜のレンジの音が、あなたの部屋にも、ちいさく響いていますか?










